2019.12.29 結婚のすすめ #001 Takram コンテクストデザイナー 渡邉康太郎さん 手の中にある「月の埃」part02-月の埃

渡邉康太郎さん
Takram コンテクストデザイナー / マネージングパートナー
慶應義塾大学SFC特別招聘教授

東京・ロンドン・ニューヨークを拠点にするデザイン・イノベーション・ファームTakramにて、事業開発から企業ブランディングまで幅広く手がける。「ひとつのデザインから多様なコンテクストが花開く」ことを目指し活動。主な仕事にISSEY MIYAKEの花と手紙のギフト「FLORIOGRAPHY」、一冊だけの書店「森岡書店」、日本経済新聞社やJ-WAVEのブランディングなど。慶應SFC卒業。在学中の起業や欧州での国費研修等を経てTakramの創業期に参加。趣味はお酒と香水の蒐集と茶道。茶名は仙康宗達。大日本茶道学会正教授。81.3FM J-WAVE 木曜日26:30-27:00の番組「TAKRAM RADIO」ナビゲーター。国内外のデザイン賞の受賞多数。また独iF Design Award、日本空間デザイン賞などの審査員を務める。最新著作の『コンテクストデザイン』は極力一般流通をさせず、トークイベントを行った書店・場所のみで販売を行なっている。 (聞き手:株式会社二重 代表取締役 吉岡芳明)

 

<月の埃>

吉岡 事前にお願いしていた結婚にまつわるモノのお話を聞かせていただけますか?

渡邉 最初にデートしたのが、僕の行きつけのレストランの『ビストロエビス』という明治通りにあるお店でした。20代の頃から一人で通っていたところです。好きな場所にお連れしたいなと思って。彼女を待つ間に本を読んだり、メモ帳にメモ書きをしていたら、いずれ彼女が現れました。話が面白いから、引き続きメモ帳にペンでいろいろ書きつけていた。そうしたら彼女が「それは月の埃ですか」と尋ねてきたんです。「はい」か「いいえ」で答えられる質問のはずだけど、そもそも「それは月の埃ですか」という疑問文がこの世にあり得るのかと、びっくりしました。よく話を聞くと、「月の埃」という名前のインクがあるそうです。15世紀から続いてるエルバンというフランスの老舗のブランドが出している、燻んだ紫色のインク。そのとき僕が使っていたインクも紫色でしたが、「月の埃」はより暗くて、落ち着いた色をしています。
その謎の質問に心を動かされて不意に恋に落ちるような、そういう会話でした。出会いの説明をするときに、よくロータリークラブでの卓話の話や、月の埃の話をしています。以来、インクはずっと月の埃です。

それが2015年の年末ぐらいだったのかな……。3、4カ月する頃に、なんとなく結婚を意識していて……。実はKIGIさんには、結婚届の証人になってもらったんですね。代官山ロータリークラブの対談直後に「2人は結婚したほうがいいよ」と言ってくれたのがKIGIの渡邉良重さんだったんです。僕の前にほわーっと現れて、「2人は結婚したほうがいいよ」って言って、またほわーっといなくなっちゃった(笑)。「2人だけでどこかに飛んでいっちゃいそうだった」とも言ってました。それを2人ともうっすら心の中に留めていたので、仕事中にサプライズでKIGIさんに会いにいって、ちょっと迷惑だろうなとは思ったんだけど、「(婚姻届の証人の欄に)書いてください」ってお願いしたら、良重さんは「そんなことだと思ってた」と言われました (笑)。

2人でオリジナルの指輪をつくったのですが、その時もKIGIさんにお世話になりました。もともとKIGIさんとジュエリーデザイナーの薗部悦子さんが一緒に作った『ジャーニー』という絵本がすごく好きでした。薗部さんのジュエリーの写真と、それを渡邉良重さんがものがたりのなかの風景として解釈し直したイラストがある。さらに長田弘さんの詩が組み合わさって一つの作品になっている。ジュエリーデザイナーとグラフィックデザイナーと詩人の三人の仕事がリンクした作品でした。その印象があって、薗部さんに結婚指輪をつくってもらうために連絡を取ったんです。受け取ったのは、KIGIさんのショップ『OUR FAVOURITE SHOP』でした。渡邉良重さんのケースも付いていて。

実は指輪は「月の埃」にまつわるデザインになっています。一見ただの細い指輪なんだけど、内側から見るとプクッと膨らんでいる箇所がある。裏から見ると、月の隕石が入っています。これは誰かに見せるためのものではなくて、自分たちが指輪を付けているときに、いつでも握るところにあるのが大事なんですね。「月の埃」で仲良くなった二人なので、実際に月の埃を手の中に握っています。 

吉岡 月の石はどうやって手に入れたんですか。

渡邉 隕石を扱うオンラインサイトがあるんですよ。隕石はひとつひとつに、英国の王立天文学会の証明書がついていますが、それをミリ単位に砕いた欠片を二つほど買い求めて、薗部さんに届け、何回か打ち合わせしながらつくってもらいました。月の隕石そのものやインク自体が大事なのではなくて、二人の間でだけ、この色や名前が意味を帯びることが大事。ある記憶が込められていく対象として「もの」がある。「もの」を介して記憶にアクセスする……。僕たちの中で指輪は、そんな風に出会ったときのことを思い返すきっかけになっています。

 

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